so far Designer Special Interview
人物像、物語が反映されたデザイン
ー ブランドを立ち上げたきっかけを聞かせてください。
山根敏史 氏:もともと夫婦で古着やヴィンテージが好きでなんです。
古着には、その年代にある背景やストーリーだったり、意味のあるもの、そういうのを感じられるののが魅力ですね。
あとは、やっぱり服を選ぶときに、 世の中にはアパレルブランドがたくさんあるけど、違うシルエットが欲しいだとか、自分ならこうするのになと 考えてしまう。
もともとメンズのデザイナーをやっていたので、 そうなるとやっぱり自分で作る方が良いってなるわけです。
きっかけとしてはベタだけど笑。
so far を始めるよりも先に国をテーマにF/CE. でバッグや雑貨を作っていたので、同じ世界観で洋服を作ったら面白いなと 思って2013年にスタートしました。
[※ 2010年スタートの山根氏のブランド "Ficouture(フィクチュール)" が、
2016AWよりブランド名を " F/CE. (エフシーイー) "に刷新 → F/CE. ]
アQ:sofar のアイテムを通してお二人のライフスタイルが見えるような気がします。
山根麻美 氏:それはありますね。
自転車に乗ったらここが擦れるからやめておこうだとか、常に自分が着ることを想像しながら 作ってます。
山根敏史 氏:結構旅に出るので、旅先で出会うカルチャーに影響を受けたりヒントをもらうことが多い。僕はそこから浮き上がって くる人物像をデザインに反映させることを意識しています。
例えば、 15 F/W はアイルランドのフィッシャーマンをテーマにしています。
アイルランドのフィッシャーマンを見てそ のスタイルをシンプルにかっこいいと思った。
フィッシャーマンの帰りを待つ女性がいたりとか、物語も見えてくる。
今までやってきた雑貨やギアっぽいものではそういったものが表現しづらかったけど洋服だと表現できるんです。
僕らの中にある不良っぽさの表現
ー 初めて sofar の展示会に伺ったとき、キューバのハバナをテーマにコレクションを展開されていました。
その国の職業だったり、人物像が洋服のディティールに落とし込まれていて、さらにルックブックも合わせて漂う 異国情緒がとても印象的だったことを憶えています。
今回のコレクションでは、どんなところにフォーカスしたのですか?
山根敏史 氏: 16F/W のテーマ” MAKE BEATS” はドイツにフォーカスをあてています。
ドイツといえば工業製品。
ものづくりをするアーティストも多くて、そういった人たちを表現したかった。
山根麻美 氏:常に不良っぽさも意識しています。
海外働いている人でも刺青が入っていたり、日本とは違う不良っぽさだとか粗野な 部分が垣間見えるんです。
山根敏史 氏:そうだね。僕らの中の不良っぽさがそうさせるんですよ。
若い頃からそういうカルチャーを通ってきた。スケートや ハードコアにパンクとか。今の世の中にはそういった要素を感じられる服が少ないかな。 僕は自分たちの目で見たきたことを洋服に意味のある形で落とし込みたいと思っています。
山根麻美 氏:そんな背景もあって、今季のファーコートもセレブ系のファーではなくて夜遊びのファー。
不良少女のファーを意識してあえてヴィンテージ っぽく作っています。モデル選びも不良っぽさを考えて選びました。
山根敏史 氏:今の日本はスタイルが多種多様でジャンル分けしようと思っても多すぎてきりがない。でも海外に出かけてみるとあまり バリエーションがない。
僕たちが若い頃はジャンルで着る服がかっこよかったし、それに憧れた。
モッズとか、並木洋服店とか、チーマーっぽいとか。
もちろんアメカジも。確立されたスタイルはかっこよかった。
アQ:ファッションが出来上がるまでのプロセスや背景が日本と海外では違いますよね。
山根敏史 氏: そうですね。
例えば西海岸のチカーノとか、ヒスパニックの奴らのきれいにプレスされたディッキーズを履いて、ベンデイヴィスのワークシャツを着るスタイル。
あのワークシャツって化学繊維じゃないですか。汚れがつきにくいし、 ディッキーズはずっとセンタープレスが残る。彼らはお金がないからなかなか服を買い換えることができないからそういう服を着ている。
そういったスタイルのストーリーがかっこいいなと。
今の日本は恵まれていて、そういったものを表現するのは難しいけど、 僕たちはそういうストーリーを理解していきたいと思っています。
服に込めるカルチャーや背景を、服そのものだけで伝えていくことは難しいと思うので、
ブランドとして、何かやっていかないといけないかなと。
そろそろ攻めていかないといけない時期なのかもしれないです。
クリエイティヴなビジネスのバランス感
ートレンドやアイディアソースはどんな風に取り入れていますか?
山根敏史 氏:トレンドのことを意識したことは全くないです。考えたことすらない。だから売れないのかな笑
でも洋服はアートだとは考えていなくて。ビジネスに落とし込めるものづくりは常に意識しているんです。
山根麻美氏 レディースにはトレンドにはまったアイテムも実はあるんですよ。
アQ:確かに、レディースは今期のアイテムもそうですね。
山根敏史 氏: レディースはそういうところがすごくうまい。僕はほとんど雑誌や本は読まないし、他のショップに行くこともない。 海外でもそうです。全く行かない。
アQ:じゃあ、本当にその土地の生活やローカルなものを見に行っているんですね。
山根敏史 氏:そうですね。ネットで何かを掘り下げることもあまりしないです。
不器用だから情報量が多いと疲れちゃうのと、考え方もブレちゃう。でもレディースでは情報をうまく駆使してると思います。
アQ:そうなんですね。女性の方がトレンドと今の着たい服の雰囲気や気分が合ったり、そういうこともありますよね。
山根麻美氏 そうなんですよね。でも他のものを全く見たくない時期もあったんです。
作りたいと思ったものが世の中にたくさん出ていて。 すでに流行っているんですよ。
それで親しくしていた先輩に相談したら「気にする必要はない。どんどん見ればいいと 思う。」ってアドバイスをくれました。「自分のフィルターを通せば自分の服になるから。」って。
実際に作ってみたら 見たことがあるものでも全く違う服になることがわかった。
それでも雑誌はあまり読まないんですよ。写真集や映画か らヒントをもらってますね。
山根敏史 氏: うちもお店の仕入れがあるから、ある程度トレンドや情報を把握しておくのは筋だとは思うんだけど、でもそれ以上にこういうこと は全て” 縁 "だと思っていて。
そういう縁があればその人といつか取り組めると思うんです。
だからあえて探すことはしなくていい
とも思っていますね。
アイコニックなブランドにしたい
ー ルックの話ですが、sofar は良い意味でルックの印象と、実物を見て着てみると印象が変わります。
そこでちょっとありきたりな質問ですけど、着こなして欲しいイメージとかありますか?
山根敏史 氏:メンズだと意外とスタンダードな落とし込んでいるんです。
ルックなどの第一印象で似合わないかもって思っても着ると 意外に普通だったりする。
全身 sofar でなくても、単品で他のものと合わせて着ても馴染むような丈感やサイズ感、 それに素材選びも考えて作っています。
山根麻美 氏: 毎日気合を入れておしゃれをするわけではなくて「今日もこのコート!」みたいに気負わず毎日着たくなるような お気に入りの洋服になって欲しい。だからあえてシワが残りにくい素材を使っていたりします。
山根敏史 氏:あと客観的に見てレディースはシルエットが特徴的だと思う。着てみると病みつきになる。
山根麻美氏 そうですね。シルエットは常に意識していて一貫しています。去年の秋冬のパンツに今季のニットを合わせられるようになど意識しています。
ー sofar は人を選ばない印象があります。でも単純にスタンダードなわけではない、他の服とはどこか違って見えるんです。 着てみるとそれが分かりますね。
山根敏史 氏:大きなロゴだとか見た目に分かりやすいアイコンを作るわけではなくて、なで肩に見せるためにドロップショルダーに しているシルエットがブランドのアイコンになっていたり。
毎シーズン大きな変 化を加えるわけではないですからね。
so far は長い時間をかけてアイコニックなブランドに育てたいと思っています。
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